『田園の詩』NO.17  「晴読雨耕」 (1994.8.9)

 
 今夏、大分県は気象台が始まって以来という記録的な猛暑と降雨ゼロの天気が
続いています。

 私の仕事場は『筆工房・楽々堂』といい、名前だけは立派(と、本人は思っている)
ですが、プレハブの小さな建物です。午後になると、トタンの屋根は「目玉焼き」が
できるほど熱くなり、部屋の中は体温を超えるくらいの暑さになります。

 そんな工房で、クタクタしながら筆を作っていたら、女房が「暑い時は無理をしないで、
涼しいところで本でも読んだら」といってくれました。亭主の健康を気遣いながらも、日
ごろの勉強不足を見透かした、まことに当を得た提案です。

 こんな時、都会なら、冷房の効いた図書館かデパートにでも行けば、涼しく読書が
できるのでしょうが、田舎にはそんな施設はありません。そこで、家の中の少しでも風
の通る場所を探して、買い込んでいた本を読むということになります。


      
      新しい工房になって、少しは涼しくなりました。書斎から仕事場に持ち込んだ本が、
       だんだん場所を占領するようになっています。
       (08.4.25 写)

 それにしても雨の降らないのも本当に困ります。田圃の水も少し不安になってきましたが、
当地はかんがい用の池がしっかりしているため、まだ大丈夫です。水をほしがっているのは
野菜たちです。「まさに、焼け石に水だなア」といいながら、風呂の水をかけるのが毎日の
農作業といったところです。

 実は、早く畑を耕したいのです。キュウリが最初に取れ出したら、また二度目の種を蒔
こうと決めていました。七月初めに待望のキュウリが食卓に上がったので、「さて、畑が
乾いてるし、雨が降ったら耕して種を蒔くか」と日程を組みましたが、一向に雨がありま
せん。一ヶ月待って、やっと私の住む国東半島に、台風が恵の雨をもたらしてくれました。

 「雨が降ったら耕す」と念仏を称えるようにいっていましたが、これで畑を耕すことが
できます。農業にとって(私など野菜を少し作っているだけですが)、水がいかに大切
であるかを、改めて思い知らされました。

 今夏は、私にとって、「晴耕雨読」とは逆の「晴読雨耕」の日が続きそうです。
                                (住職・筆工)

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